ギリシア世界6 ヘレニズム時代 その1

  マケドニア王・フィリッポス2世には、アレクサンドロスという息子がいました。彼は片目が緑、片目が茶色という珍しい目をしていました。そんなこともあって、お母ちゃん(フィリッポスの奥さん)のオリュンピアスが息子に向ける愛情は、ちょっと度を越したものがあったようです。
  以前から「アレクサンドロスの父親はフィリッポスじゃない。神々の王ゼウスが蛇に化けて私と交わり、あの子ができたのよ~♪」なんて言いふらしていたくらいですから。さすがにこれは、お父ちゃんも快く思わず、夫婦の仲は冷え切っていました。とはいえ、フィリッポスも愛人をたくさんつくってオリュンピアスに冷たかったのですが。
  いつの世でも、息子というものはお母ちゃんの味方。アレクサンドロスとしては、お母ちゃんをいじめるお父ちゃんが許せなかったようです。
  そんな前336年、フィリッポスは演説の最中に、パウサニアスという若い貴族に暗殺されてしまいます。享年47歳。
  アレクサンドロスはただちに後継者として名乗りを上げ、混乱する前にマケドニアをまとめあげます。アレクサンドロス大王の誕生です。まだ20歳になったばかりのことでした。
  そして前334年、お父ちゃんが計画していた、アケメネス朝ペルシアへの遠征を開始するのです。以前から、たびたびギリシアのポリスに干渉して混乱させてきたペルシアに仕返ししてやろうと、コリントス同盟(ヘラス同盟)のリーダーとなったフィリッポス2世は考えていたのでした。
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  ペルシア王ダレイオス3世は完全にナメきっていたので、将軍ミトリダテスに「テキトーにやっつけといて」くらいのノリで丸投げしてしまいました。
  最初の戦いは、マケドニア・ギリシア連合軍18000 VS ペルシア軍40000という圧倒的不利な状況で始まりました。前334年のグラニコス川の戦いといいます。
  大王はハデな鎧に身を包み、愛馬ブケファロスにまたがって、たった一人、敵陣に突進していきました。あわてる部下なんかお構いなしに、まっすぐミトリダテスめがけて突っ込みます。そして投げ槍一閃、ミトリダテスをしとめてしまいました。
  「スッゲー、うちの大将は本当に神の子かもしれない!」と、部下たちのやる気も大いに上がります。対してペルシア側は、大将はあっけなくやられるし、相手はなんか神がかってるしで、ビビって逃げてしまうのでした。

  グラニコス川の戦いに勝ったマケドニア軍は、ゴルディオンという町を占領します。この町の神殿には、戦車が一台祀られていて、ロープで複雑に結び付けられていました。「ゴルディオスの結び目」といわれる、いわくつきのものです。
  言い伝えでは「この結び目を解いたものは、全アジアを支配するだろう」とありました。それを聞いたアレクサンドロス、なんと、結び目を剣でバッサリ切ってしまったのです。そして「運命とは伝説によって導かれるものではなく、自らの剣で切り開くものだ」と部下に語ったといいます。
  英雄の言葉って、なんでこう、いちいちかっこいいんだろう。

  さてここまできて、ダレイオス3世も不安になってきたようで、自らが指揮をとって軍を進めてきました。こうしてついに、大将同士の初対決が実現します。前333年のイッソスの戦いです。
  マケドニア・ギリシア連合軍30000 VS ペルシア軍100000と、またしても圧倒的不利な状況でしたが、グラニコス川のときと同じように、アレクサンドロスは単身、敵軍のど真ん中に突っ込んでいきます。しかし今回は、太ももを槍が貫通するという大怪我を負ってしまいます。
  それでも根性でダレイオスの前までたどりつくと、何とダレイオス、部下を置き去りにして、さっさと逃げてしまうのでした。
  大将があっけなくばっくれてしまったので、当然戦いもマケドニアの大勝利に終わりました。しかも、ダレイオスの母・妻・娘を捕虜にするという大戦果を挙げたのです。
(画像はWikipediaより)
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  このモザイク画は、イタリアのポンペイという遺跡で発掘されたものです。
  画面左側の、胸から下のタイルがはがれてしまっているのがアレクサンドロス。愛馬ブケファロスに乗っています。
  これに対して、中央やや右で、戦車に乗っているのがダレイオス3世。
  ダレイオスは今まさに逃げようとしています。御者が馬に鞭を入れているのがわかりますか。
  ダレイオスは、悲しそうな顔をして右手を差し出しています。恐らくは、残していく兵隊たちに対し、「申し訳ない」という気持ちをあらわしているのでしょう。

  ここでダレイオスは和睦を申し入れますが、アレクサンドロス大王はこれを拒否、さらに進軍を続けます。そして前332年、ペルシアに支配されていたエジプトを占領しました。
  現地のエジプト人は彼を解放者として大歓迎で迎えました。気をよくしたアレクサンドロス、ナイル川河口に町をつくりました。その名もアレクサンドリア市
  この後、征服した領土に、70以上のアレクサンドリア市をつくります。全部同じ名前だから、当時の人たちはさぞかし混乱したことでしょう。
  加えてアレクサンドロスは、ファラオとして認められ、神殿に神々の一人として像を祀られます。そして、太陽神アモンの神殿で神託を受け、自分がゼウスの子だと確信するのです。

  前331年、ついにダレイオスとの決着のときがきました。アルベラ(ガウガメラ)の戦いです。マケドニア・ギリシア連合軍47000 VS ペルシア軍20万~30万! でも、またまたマケドニア側が勝利し、ダレイオスは再び逃げちゃいます。とはいえ、ペルシアの滅亡は決定的となってしまいました。
  実はこの戦いの前日、アレクサンドロスの部下が、数で圧倒的に不利なので、夜中に奇襲攻撃をかけようと進言します。大王は「私は勝利を盗まない」なんて、またまた格好いい台詞を吐き、部下の意見を却下しました。でもこれが大正解だったのです。ペルシア側も、ぜったい夜中に襲ってくるだろうと思って、朝まで寝ないでずっと見張っていたのでした。
  ペルシアの兵隊は朝まで臨戦態勢のまま起きていなければなりませんでした。これに対してマケドニアの兵隊は、ぐっすり眠って体力を回復していたのです。無駄に体力を削ってしまったペルシア兵と朝から元気なマケドニア兵、やる気がぜんぜん違いました。
  加えてペルシア軍は、数はめっぽう多かったのですが、広大な領土のあちこちから無理やり集められた、寄せ集めの軍隊でした。しかも圧倒的な数の有利さが、逆に兵たちの油断を誘います。これだけの差があるなら、別に自分ががんばって戦わなくても勝つだろう、勝ち戦で死にたくない、なんて心境に、みんななってたんじゃないでしょうか。
  逆にマケドニア軍は、大将は神の子だし、今まで本当に不可能を可能にしてきた実績があります。この人についていけば、なんでもやれるんじゃないか、なんて気持ちだったんじゃないかな。やる気がぜんぜん違っていたのです。
  とにかく、マケドニアの勝利は現実のものとなりました。

  マケドニア軍はペルシアの中心部へと乱入し、バビロンスサなどの大都市を略奪しまくります。ペルセポリスの宮殿は、略奪されたあと火をかけられ、徹底的に破壊されました。理由は、アレクサンドロスの愛人の一人が、200年も前のペルシア戦争のうらみを晴らしたいと願い出たからなんです。アレクサンドロスも酔っ払っていたので、調子に乗って破壊を命令してしまいました。

  前330年、逃げたダレイオス3世は、側近のベッソスによって殺されてしまいます。
  伝説によれば、逃げ込んだ山小屋の中で、今にも死にそうなダレイオスを見つけたアレクサンドロスは彼を抱き起こし、その胸の中で息絶えたといいます。アレクサンドロスは、このときダレイオスからペルシア王の地位を譲り受けたというのです。
  でもこれは、アレクサンドロス自身が主張していることで、彼以外にその場面を見た者はいません。それでも、この時点でアレクサンドロスに逆らえる人間なんか一人もいなかった。
  こうしてアレクサンドロスは、正統なペルシアの王となりました。

  一方逃げたベッソスは、自らペルシア王を名乗り、抵抗を続けます。
  しかし、追撃してきたマケドニア軍に敗北し、さらに仲間に裏切られ、ついに捕まってしまいました。
  ベッソスは、耳と鼻を削ぎ落された後、ダレイオスが殺害されたところで磔にされ、殺されたといいます。


この話はまだまだ続きます。





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この記事へのコメント

ほの
2013年09月18日 19:41
こんにちは。見てみました。これで次の世界史のテストがんばります!!

ほのさん
2013年09月18日 21:11
見つけてくれてありがとう。
テスト期待してます。
ほの
2013年09月18日 22:53
うん!期待してて!90点まで伸ばすようにするから!
ほの
2013年09月19日 11:34
授業や自分でまとめて分からない事があったら、ここで質問しても良いですか?
ほのさん
2013年09月19日 20:02
基本的に大丈夫だけど、返答にかなり時間がかかってしまう恐れがあります。それでもよろしければ。
ほの
2013年09月20日 19:40
わかりました!お願いします!
ほの
2013年10月04日 19:32
文化祭見にこれたら見に来てください!吹奏楽明日は9時から明後日は2時からなんで来れたら来てください!

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    Excerpt: 「ギリシア世界6 ヘレニズム時代 その1」について 前回のアップから、2カ月以上空いてしまいました。 すべては著者の怠慢です。 もっと頻繁にアップできるよう、努力したい! Weblog: 人は一人じゃ生きていけない ――物語・世界史―― racked: 2011-08-23 19:40