ギリシア世界1 エーゲ文明

  今日から新しい地域のお話です。地中海の東側、アナトリア半島(小アジア)とバルカン半島に囲まれた海。小さな島々がたくさん浮かぶ、ヨーロッパの人々にとっては、一級のリゾート地。舞台はエーゲ海に移ります。
(以下、写真は全部Wikipediaより  ちなみに地図は全部自作です)

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  前2000年ごろ、ちょうどエーゲ海の入り口をふさぐように位置するクレタ島で、いくつかの都市国家を統一したクノッソスという都市国家が現れました。これがクレタ文明の始まりです。オリエント、特にエジプト文化の影響を強く受けて発達しました。
  遺跡からは、タコが踊るようにクネクネしてる絵が描かれた壷や、イルカたちが元気よく飛び跳ねてる壁画など、海の生物をあしらった、明るい芸術作品が遺されています。クレタ文明は、どうやら明るく平和な海洋文化を営んでいたようです。
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  でも、王様の力は結構強く、富を集めて壮大な宮殿を造営していました。代表的なものはクノッソス宮殿です。丘の斜面につくられたうえに、何度も建て増しを行ったようで、とても複雑な構造をしています。
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  クノッソス宮殿、ある有名な神話の舞台となりました。
  この宮殿に住んでいたのは、伝説の王・ミノスでした。彼は海神・ポセイドンに、王様になれるようお願いしました。神はその願いを聞き入れる代わりに、美しい白い牡牛を生贄にささげるよう命じます。
  約束通り、ポセイドンはミノスを王様にしてあげました。でもミノスは牡牛のあまりの美しさに、生贄にすることをためらい、代わりに普通の牡牛を生贄にささげます。神との約束を裏切ったのです。
  怒ったポセイドンは、ミノスの奥さん・パシパエが牡牛に恋をしてしまうという呪いをかけます。そして、何とパシパエは牡牛と交わり、その結果、子どもができてしまいます。生まれた子は、顔は牛で体は人間という怪物なのでした。
  この怪物は、“ミノスの牛”という意味のミノタウロスと呼ばれます。星座占いが好きな子は、牡牛座のことをタウロスというの、知ってるでしょう。
  さて、ミノタウロスは成長すると、誰の手にも負えない暴れん坊になります。困ったミノス王は、入ったら二度と出てこれない巨大な迷宮を造り、ミノタウロスを閉じ込めてしまいます。そして彼の食事として、アテネから9年ごとに少年少女を7人ずつ送るよう命じるのです。
  そこに登場するのが、テセウスという英雄です。3度目の生贄を送るとき、彼もその中に混じります。そして迷宮に入ろうとしたところで、ミノス王の娘・アリアドネに出会い、二人は恋に落ちてしまいます。
  アリアドネは迷宮に入ろうとするテセウスに、糸玉を渡します。この糸を解きながら入っていけば、これを目印に、迷宮から抜け出せるはずです。果たしてテセウスは見事ミノタウロスを打ち倒し、脱出にも成功するのでした。

  まあ現実に牛と人間の合いの子なんかいるわけないんですが、この伝説ができる元になった(んじゃないかなっていう)事実ならあります。クノッソスの遺跡からは、みんなにもおなじみの家畜の牛の骨と、すでに絶滅したオーロックスという、肩までの高さが1.8メートルもある巨大な野生牛の骨が発掘されています。それから、この二つの牛の中間くらいの骨も発掘されています。どうやらクノッソスでは、おとなしい家畜の牛と、暴れてしょうがないオーロックスとをかけあわせ、あいのこをつくっていたようなのです、しかも国家機密で。
  体は大きくても、おとなしい牛。ほしいと思う国はいくらでもあったでしょう。これを周囲の国に売りつけて、大儲けしていたのではないでしょうか。
  でも、“あいのこ”といううわさは広がりながら大きくなって、いつの間にか、牛と牛ではなく牛と人間になってしまったのではないでしょうか。
  伝説って、やっぱり何かモトネタがあるものなんです。

  さてクレタ文明は、明るく平和な海洋文化だったらしい。ということは、戦争はあんまりやってなかったと推測されます。実際、彼らの遺跡には城壁が見当たりません。武器の出土も、極端に貧弱です。
  でも、文化は大いに発達し、独自の文字も使用していました。彼らは線文字Aと呼ばれる文字を発明しています。でもこの文字、保存が悪いうえに出土数も少ないので、未だに解読されていません。だから、クレタ文明がどのような民族によって運営されていたかも、まだわかってないのです。
  ちなみに、クレタ文明を発掘したのは、イギリスのエヴァンズという人です。

  一方その頃ギリシア本土では、ギリシア系アカイア人ミケーネとかティリンスなどの小王国をつくっていました。これを、代表的なミケーネからとって、ミケーネ文明と呼びます。
  アカイア人は前2000年ごろ、つまりクノッソスがクレタ島を統一した頃、北の方からギリシア半島に移動してきた人々のことです。
  前1600年ごろ、ペロポネソス半島のミケーネを中心に、独自の文明を築き上げていきます。
  こっちは、クレタ文明とは対照的に、非常に戦闘的で、軍事への関心が高かったことがわかっています。都市にはちゃんと城壁があったし、武器もたくさん出土しています。クレタと同じく、強大な王様が支配していたんでしょう。
  でもクレタと違うところは、支配している農民から、役人を通じて貢物を持ってこさせるという形で税を徴収する、貢納王政を行っていたところです。
  そんな軍事国家だから、目の前に明るく平和な文化があって、ミノタウロスなんかつくって儲けているところがあれば、迷わず狙うでしょうね。というわけで前1400年ごろ、クレタ文明を滅ぼしてしまいました。
  このときアカイア人たちは、クレタで使われていた線文字Aに出会います。そしてこれを参考に、線文字Bを発明するのです。こちらのほうは、状態のいいやつが多数出土しているので、すでに解読に成功しています。解読したのはイギリスのヴェントリスです。

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  この戦闘民族、前13世紀には小アジアのトロイアも滅ぼしています。発掘したのはドイツのシュリーマン。彼は幼い頃に、ホメロスの叙事詩「イリアス」「オデュッセイア」を読んで感動し、発掘を志したそうです。
  以下は「イリアス」のお話。
  トロイアの王子・パリスは、スパルタ王・メラネオスの妻・ヘレネと恋に落ちてしまい、彼女をトロイアへ連れ去ってしまいました。怒ったメラネオスは兄のアガメムノンに、女房を奪い返すから協力してくれとお願いします。アガメムノンは、ギリシアでも有数の大ボスだったのです。
  彼の要請で、ギリシア中から兵隊が集まり、ここにトロイア戦争が始まります。この大軍団を率いたのが、アキレウスという英雄です。彼はプティア王・ペレウスと海の女神・テティスの間に生まれた、人間と神のハーフでした。
  テティスは生まれた子を冥府の川・ステュクスに浸しました。この川の水に浸かったものは、不死身の体を手入れることができます。しかし女神は息子の足首を持って川につけたので、アキレウスは不死身の体を手に入れたのですが、握られていた足首だけは、生身のまま残されました。致命的な弱点ができてしまったのです。足首にある腱をアキレス腱っていうでしょ。由来はこれなんです。
  さて、戦争のほうですが、10年かかってもトロイアは陥落せず、ギリシア軍もいらいらしていました。そこである奇策を思いつきます。軍の本隊を後退させ、城門の前に巨大な木馬を造って置いておきました。
  トロイアの兵士たちは、ついにギリシアはあきらめ、負けた証として、木馬を謙譲してきたんだろうと思いました。実はこの木馬の中に、アキレウス以下、少数の精鋭部隊が潜んでいたのです。
  勝ったと思い込んだトロイアは、木馬を街に引き込み、宴会を始めます。
  みんな酔っ払って寝込んでしまうと、ころあいを見計らって、アキレウスたちが出てきます。そして城門を開くと、隠れていたギリシア軍本体が一斉に攻め込み、ついにトロイアは陥落しました。
  でもアキレウスは、王子・パリスの放った矢がアキレス腱を貫いたので、死んでしまうのです。
下の写真は、映画「トロイ」で使われた木馬です。
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  こうしてトロイアは滅亡したのですが、「イリアス」はあくまでも神話のお話なので、どこまでが本当なのかは謎のままです。だから、本当はミケーネ文明に滅ぼされたんじゃないかもしれません。
  発掘したシュリーマンは、あくまで実業家であり、考古学者でも歴史学者でもありませんでした。だから彼の発掘はめちゃくちゃで、遺跡は取り返しがつかないほど傷付いてしまいました。
  トロイアからは文字も発見されていません。だから、どんな民族が営んでいたかも不明です。

  これほど強勢を誇ったミケーネ文明ですが、前1200年ごろ、突然滅亡してしまいます。宮殿がほとんど燃え落ちてしまいました。
  ちょうどこの時期は、かの“海の民”が暴れまわった時期なので、それに巻き込まれたんじゃないか、なんて説もありますし、この頃南下してきたギリシア系ドーリア人に滅ぼされたんじゃないかという説もあります。天変地異で滅びたかもしれません。要するに、原因は謎のままなんです。

  ギリシア世界は混乱の時代に突入しました。いつしか文字も失われてしまったので、記録がぜんぜん残っていません。
  こんな混乱期が、約400年も続きました。暗黒時代と呼んでいます。でもこの時期に、ドーリア人がギリシアに鉄器文化を持ち込みました。

  暗黒時代が明けると・・・その先には何が待っているのでしょう。

以上、エーゲ文明でした。

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この記事へのコメント

カレブランカ
2011年04月28日 07:49
おはようございます。地図を自作するなんてすごいですね。こうした歴史的なものでも、それから数学や物理のようなものでも、そうした学問に関するブログのほうが、落ち着いた感じがしますね。何か、日記とかニュースのようなものより、ほっとしたものがあります。
管理人
2011年04月28日 08:57
カレブランカさん>
読んでいただき、ありがとうございます。
これからも、かなりマイペースではありますが、続きを掲載していきたいと思っております。

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