先史の時代2 農業革命

  約1万年前、ついに氷河期が終わりました。地質年代でいうと、更新世から完新世に移行しました。地球は急に暖かくなってきます。
  でも、ただ右肩上がりに気温が上昇するわけでなく、ちょうど1年のうちで、冬から春に季節が変わるときに寒の戻りがあるように、突然気温が下がることもありました。
  この頃、100年間で年平均気温が6度も低下したことがありました。例えば年平均気温が1度下がると、140km北上する計算になります。東京の気温が、福島と栃木の県境くらいになる計算です。これが6度となると、北海道の苫小牧くらいまで北上することになります。
その後280年、この低温期が続き、その後たった50年で平均気温が7度上昇しました。これだけの変化が短期間で起きると、多くの植物はその変化に適応できず、ほとんど死滅してしまいます。これは動物も同じ。だから人間も生き残るのは大変なことでした。

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  チグリス・ユーフラテス川の流域から地中海東岸にかけて、肥沃な三日月と呼ばれる地域があります。豊かな緑が広がっている地域です。
  しかしその周辺には乾燥地帯が広がっています。この地域の人間は、肥沃な三日月の豊かさを求めて集まってきました。そして、森林地帯と草原地帯の境目あたりに定住し始めます。森や草原の豊かな恵みの中で、もう移動しながら食料を探さなくてもよかったのです。
  しかし、突然の“寒の戻り”によって、豊かさは奪われてしまいました。
  そのような過酷な試練の中で、人間は“ムギ”と出会います。これをただ食べてしまうだけでなく、草原から他の植物を取り除き、ムギの種を蒔いてみる。すると勝手に育ち、蒔いた量よりはるかに多くの実をつけるのです。
  イネ科の植物の種は、何年も保存がききます。肉や果実のように、すぐ腐ってしまうことがありません。だから、つくれるときにまとめてつくって、寒い時期をしのごうとしたのです。これが、農業の始まりだと考えられています。
  ただし、これはひとつの仮説に過ぎません。単に人間の数が増えすぎて、自然からいただいているだけでは追いつかなくなり、仕方なく農業を発明したのかもしれない。単純においしいムギを選んで育てて増やそうと思っただけかもしれない。“寒の戻り”は農業の引き金ではないと主張する学者も多い。よくわかっていないのが現状です。
  でもとにかく、人間は農業を発明しました。自然から取ってくるより、はるかに安定した収穫を得られるようになりました。

  ちなみに、農業よりちょっと早く、羊やヤギなどの野生動物を捕らえ、育てて増やす、牧畜も発明されています。

  飢えて死ぬ人間が減少し、人間が増えてくると、さらに広い畑を作ることができます。
  こうしてどんどん、生産力が増えていきます。すると、何人かは農業に携わらなくても、その人たちを養うだけの余分ができてきます。これを余剰生産物といいます。余剰生産物が増えてくれば、それだけ多くの、生産に携わらない人間を養えるようになります。
  神官、戦士、商人、生産を管理する役人、そして支配者。農地が増え、関わる人間が増えれば、それを組織的に管理する人間が必要になります。
  そして余剰生産物を管理する間に、豊かさを多く得られる人間と、あまり得られない人間が現れます。そう、貧富の差や支配するものされるものという、身分格差も生まれてきます。こうして、みんながほぼ同じ立場にあった村落社会ではなくなっていくのです。

  農業が始まった頃の約10000年前から、地質年代では完新世に入ります。そして現在も完新世です。
  農業が始まって、石器も打製石器から、もっと使いやすく加工された磨製石器や、石器の加工のときにできる細かい欠片を木や骨にはめ込んだ細石器なども使われ始めます。農業の始まりとともに、旧石器時代から新石器時代へと移り変わってゆくのです。

  最古の農耕集落跡は、ヨルダンの死海北岸にあるイェリコ遺跡や、イラク北東部のジャルモ遺跡です。どちらも「肥沃な三日月」の中に入ってます。

  ここまで、いわゆる「肥沃な三日月」地帯を中心に話を進めてきたけど、ここ以外でも、独自に農業を始めた地域がいくつかあります。
  例えば、中国の長江流域では、12000年前に稲作が始まっていたことが、最近の調査で分かっていますし、ニューギニアあたりでは、タロイモやヤムイモといった根菜類の栽培が始まっています。
  アメリカ大陸でも、全く独自の農耕が始まりました。今から7000年以上前、トウモロコシやジャガイモなどの栽培が始まっています。
  そして日本でも、青森県の三内丸山遺跡では、5500年前にクリの栽培を始めていました。

  農業の発明によって、人類の生活は劇的に変化しました。それはまさに「農業革命」ともいえるほどのインパクトのある、大事件でした。


  ちなみに、人間が金属を加工して使用し始めるのは、約6000年前のアナトリア半島(現・トルコ共和国)といわれています。最初に利用されたのは、金と銅だったといいます。この二つの金属は、そのまま、ある程度の大きさで固まって埋まっていることが多いので、見つけやすかったことと、やわらかいので加工がしやすかったことが、最初に利用された理由と考えられています。

  そして約5500年前に、銅と錫の合金である青銅が発明されます。
  こうして人類の歴史は、青銅器時代へと突入するのです。

  以上、農業革命のお話でした。





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この記事へのコメント

ビギナ
2011年05月21日 18:51
今更すいませんが、青銅が発明されたのは
5500万年前ではなく
3500万年前では?
ちなみに私の知識は
「ヒッタイト=鉄」
で止まっていますので、確認程度でいいです。
ひこじろう
2011年05月21日 20:31
ビギナさん>
ご指摘ありがとうございます。
さっそく調べてみました。
やはり、およそ5500年前(「万」はないです)に、シュメール人が発明したようです。
ビギナさんは、BC3500年と書かれた記述をご覧になったのではないでしょうか。

また何かございましたら、どんどんご指摘ください。
しゅう
2012年05月19日 22:46
現代社会ありがとうございました

これから読みたいと思います
千葉の高一
しゅう さん
2012年05月21日 09:49
こちらこそ、中途半端になってしまって申し訳なく思ってます。
中間テスト、いい点取れるよう応援してます。
タコ
2014年02月13日 09:08
画像の上エジプトと下エジプトが逆のようです。
タコさんへ
2014年02月13日 18:49
ご指摘ありがとうございます。
逆ですね。お恥ずかしい限りです。
直します。

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